令和6年度から始まった新しい処遇改善加算について「制度が複雑でわかりにくい」「申請や配分が合っているか不安だ」とお悩みではないですか?
本記事では、処遇改善加算の基本的な仕組み、区分ごとの要件、申請手続き、職員への配分ルール、そして令和7年度から必須となった対応まで、わかりやすく解説します。
この記事を読めば、複雑な制度を正確に理解し、自信をもって申請や配分が行えるようになりますので、ぜひご覧ください。
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処遇改善加算とは?わかりやすく解説【令和6年度版】
処遇改善加算は、介護や福祉の現場で働く職員の給与を上げるための大切な制度です。介護業界の人材不足を解消する目的があります。
令和6年度からは、それまでわかれていた3つの加算が1つにまとまり、しくみが大きく変わりました。申請を担当する方にとって、正確な理解は欠かせません。
ここでは、制度の目的やしくみ、今回の変更点、対象となる事業所についてわかりやすく解説します。
参考:厚生労働省『「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります』
処遇改善加算の目的としくみ
処遇改善加算の目的は、介護職員などの給与を引き上げ、働きやすい職場環境を整える点にあります。
介護業界は、他の産業と比べて給与が低い傾向があり、深刻な人材不足が続いています。この問題を解決し、人材を確保するために設けられた制度です。
令和6年度からは制度が新しくなり、加算率も引き上げられました。目標として、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップが期待されています。
新しい加算を取得するには「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つを満たす必要があります。
加算として受け取ったお金は、事業所の売上にはなりません。必ず職員の給与アップなどに使うルールになっています。職員の待遇を直接良くするためのしくみといえるでしょう。
令和6年度から3つの加算が1つになった
令和6年(2024年)6月から、それまであった3つの処遇改善加算が1つにまとまりました。新しい制度の名称は「福祉・介護職員等処遇改善加算」です。
以前は目的別に3つの加算が存在し、それぞれ申請書類やルールが異なり、非常に複雑でした。事業所の事務的な負担を減らし、制度をわかりやすくするために一本化が進められています。
具体的には「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3種類が統合されました。旧制度では加算ごとに計画書を作成する必要がありましたが、今後は1つの計画書で済むようになります。
一本化で何が変わったのか
加算の一本化により、申請の事務負担が減り、事業所内でのお金の配分がより柔軟になりました。制度をわかりやすくし、事業所が柔軟な運営をできるようにすることが狙いです。
具体的な変更点は以下のとおりです。
- 新加算は4区分(I〜IV)に再編
- 加算率が全体的に引き上げられた
- 職種間の配分ルールが緩和された
- 加算額の繰り越し運用が認められた
特に大きな変更は、職員への配分ルールになります。「介護職員への配分を基本」としつつも、他の職種へも事業所の判断で配分しやすくなりました。
旧制度からの移行で加算額が下がらないよう、令和7年3月末までは経過措置(V区分)も用意されています。各事業所の実情に合わせた賃金改善がしやすくなるでしょう。
対象になる事業所と対象外の事業所
加算制度は、多くの介護サービス事業所が対象ですが、一部対象外となるサービスもあります。制度の目的が、主に介護に直接関わる職員の待遇を良くすることにあるためです。
対象となるのは、訪問介護、通所介護(デイサービス)、特別養護老人ホーム、グループホームなどです。多くの施設や在宅サービス事業所が含まれます。
一方で、対象外となるサービスも決められています。訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具の貸与や販売、居宅介護支援などが対象外です。
これらのサービスが対象外となるのは、制度のルールで「主に介護職員が働く場所」とは決められていないからです。あなたの事業所が対象に含まれるか、対象外のサービスでないかを事前に確認しておきましょう。
処遇改善加算でいくらもらえるのか
処遇改善加算で受け取れる金額は、どの区分を選ぶかによって変わってきます。加算Ⅰの加算率が最も高く、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと順に低くなるしくみです。
ここからは、加算区分ごとの違い、施設の選び方、必要な要件について解説していきます。
加算ⅠからⅣで金額が変わる
新加算では、ⅠからⅣの区分によって受け取れる金額が大きく異なってきます。最も加算率が高いのは加算Ⅰで、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと順に低く設定されています。
事業所が受け取る金額は、月ごとの総単位数に選んだ区分の加算率を掛けて算出され、加算率が高いほど職員の賃金改善に使える資金が増えるしくみです。
加算率はサービスの種類によって異なり、たとえば訪問介護の場合、加算Ⅰは24.5%である一方、加算Ⅳは14.5%と大きな差があります。
あなたの施設はどの区分を選ぶべきか
事業所が現在満たせる要件と職員の賃金改善の目標額を踏まえ、可能な限り上位の区分(加算ⅠやⅡ)を選択することが望ましいでしょう。上位の区分ほど加算率が高く、職員の待遇改善により多くの資金を充てられるからです。
加算ⅠやⅡを選ぶには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 経験や資格に応じた昇給の仕組み(キャリアパス要件Ⅲ)
- 年額440万円以上の職員を1人以上配置(キャリアパス要件Ⅳ)
ただし、2の要件は小規模事業所などでは免除される場合があります。
旧制度の加算を受けていた事業所には、経過措置として加算Ⅴを算定できる期間が設けられていました。加算Ⅴは令和7年3月末で終了したため、令和7年4月以降は加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかへの移行が必要となっています。
各区分で求められる要件
上位の区分を算定するには、より多くの厳しい要件を満たさなければなりません。
要件は「キャリアパス」「月額賃金改善」「職場環境等」の3つの柱で構成されています。加算Ⅰに近づくほど、職員の昇給のしくみ整備や経験豊富な職員への待遇など、条件が厳しくなっていきます。
キャリアパス要件の一部については、令和6年度中は誓約のみでの算定が認められていました。令和7年度末(令和8年3月)までは、引き続き誓約での対応が延長されています。
特に職場環境等要件では、令和6年度中は以前の要件が適用されていましたが、令和7年度(令和7年4月)以降は、加算区分によって実施すべき「取り組みの項目数」が変更されています。
現在の新しい要件での対応は以下のとおりです。
- 加算Ⅰ・Ⅱ:6区分で各2つ以上(生産性向上は3つ以上)
- 加算Ⅲ・Ⅳ:6区分で各1つ以上(生産性向上は2つ以上)
上位区分を維持・取得するため、体制を適切に運用していきましょう。
処遇改善加算の申請から配分までの流れ
処遇改善加算を正しく運用するには、申請、計算、配分という一連の流れを理解しておく必要があります。特に令和6年度から制度が一本化され、申請書類や配分のルールが変更されました。
ここでは、申請手続きから職員への配分ルール、注意点までを順を追って解説していきます。
申請の流れと必要な書類
加算の申請は「計画書の提出(事前)」と「実績報告書の提出(事後)」が基本の流れです。手続きには期限があり、書類の提出漏れは加算が受けられなくなる原因となります。
申請の主な流れと書類は以下のとおりです。
- 処遇改善計画書の作成と職員への周知
- 処遇改善計画書と体制届の提出
- 実績報告書の提出(年度終了後)
書類の提出期限には注意が必要です。令和7年度の当初(4月)から算定する場合、計画書の提出期限は令和7年4月15日でした。
年度終了後の「実績報告書」は、令和7年度分(令和8年3月まで)の実績について、令和8年7月31日までに提出する形となっています。年度の途中で加算区分を変更する場合も、体制届などの提出が必要です。
年度の途中で新たに算定を開始する場合(令和7年6月以降)は、原則として「加算を取得する月の前々月の末日」までに計画書を提出しましょう。
参考:長野県『令和7年度介護職員等処遇改善加算について』
加算額の計算方法
事業所が受け取れる加算額は、月ごとの総単位数に加算率を掛けて計算する形です。加算率は加算Ⅰが最も高く、賃金改善に使える金額が大きくなります。
具体的な計算式は以下のとおりです。
(1)加算単位数=(基本サービス単位数+他の加算減算単位数)✕加算率(%)
※小数点以下は四捨五入
(2)加算額(円)=(1)の加算単位数✕地域区分単価
※小数点以下は切り捨て
まず、処遇改善加算を除く月の総単位数を算出してください(式1のカッコ内)。次に、総単位数に加算率を掛けます。小数点以下が出た場合は四捨五入して「加算単位数」を確定させましょう。
最後に、確定した加算単位数に地域区分単価を掛けます。小数点以下が出た場合は切り捨てて「加算額(円)」が決まるしくみです。
計算ミスは配分額の不足につながるため、正確に算出しましょう。
職員への配り方のルール
加算で得たお金は、全額を職員の賃金改善に使い切るのが大原則です。加算は職員の給与を「上乗せ」するためのもので、基本給などを下げることは認められません。
新しい制度では、職種間の配分ルールが柔軟になりました。介護職員への配分を基本としつつ、事業所の判断で事務職員など他の職種へも配分できます。ただし、職務内容と関係なく特定の人にだけ配るような偏った配分はできません。
令和6年度中は猶予されていましたが、令和7年度からは新たな要件が本格的に適用されています。加算額の一部を「月給」(基本給や毎月支払う手当)の改善に充てる要件(月額賃金改善要件Ⅰ)です。
令和6年度と7年度の2年間で賃金改善を調整するしくみになっているため、年度末に向けて計画的に配分しましょう。
よくある失敗と注意点
申請や配分でよくある失敗は、手続きの期限切れや書類の不備、配分ルールの誤解です。特に令和7年度からは、制度の移行や新しい要件の開始に伴う注意点があります。
まず、計画書や実績報告書、賃金台帳などの関連書類は、指導監査で確認されるため、必ず2年間は保管してください。
経過措置であった加算Ⅴは令和7年3月末で終了しました。現在は加算Ⅰ~Ⅳのいずれかを取得している必要があります。
また、令和7年度から加算Ⅰ・Ⅱを算定する事業所は、職場環境等要件の取り組み内容を公表する「見える化」が求められています。賃金規程を変更した際は、関係各所への届出も忘れないようにしましょう。
よくある質問
処遇改善加算は制度が複雑で、専門用語も多いため、多くの疑問が寄せられます。
特に職員への配分方法や、令和7年度からの変更点、申請期限などは間違いやすいポイントです。
ここでは、事業所の担当者からいただくことが多い質問について、わかりやすく回答します。
処遇改善加算は全ての介護職員がもらえますか?
加算は、必ずしも介護職員全員に配分されるわけではありません。事業所の判断で、配分する対象者や金額を決められます。
配分の基本は「介護職員」であり、特に経験や技能のある職員に重点的に配分します。そのうえで、事務職員や施設のケアマネジャーなど、介護以外の職員にも柔軟に配分することも可能です。
パートや派遣職員も配分の対象に含めることが可能です。ただし、一部の職員にだけ集中させるなど、仕事内容に見合わない偏った配分は認められていません。
事業所の裁量で、貢献度などに応じて配分ルールを決める必要があります。
令和7年度から必須になった対応は?
令和7年度(令和7年4月)から、加算を算定するために複数の対応が必須になりました。
特に注意すべき点は以下のとおりです。
- 加算Ⅴ(経過措置)が令和7年3月末で終了
- 加算額の一部を「月給」で配分する要件が開始
- 加算Ⅰ・Ⅱは取り組みの「見える化」が必須
経過措置であった加算Ⅴは終了したため、必ず加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかに移行している必要があります。また、令和6年度は猶予されていましたが、加算額の一部を基本給などの「月給」で改善する要件が本格的に始まりました。
加算Ⅰ・Ⅱを取得する事業所は、職場環境の取り組み内容をホームページなどで公表する「見える化」が求められています。
申請期限を過ぎた場合はどうなりますか?
提出する書類によって、期限を過ぎた場合の影響が異なります。
「計画書」の期限を過ぎると、加算の開始時期が遅れます。計画書は、加算を受けたい月の「前々月の末日」までに提出するのが原則です。もし提出が遅れると、その分だけ加算の算定開始も後ろにずれてしまいます。
「実績報告書」の期限を過ぎると、さらに重大な問題になります。年度終了後に提出する実績報告書が遅れたり、不備があったりすると、その年度に受け取った加算の全額を返還しなくてはならない場合があります。
書類の提出期限を守ることは、加算を運用するうえで非常に重要です。
【まとめ】令和6年度の処遇改善加算をわかりやすく解説しました
令和6年度から一本化された処遇改善加算のしくみ、区分ごとの要件、申請から配分までの流れを解説しました。令和7年度からは、月額賃金改善要件や職場環境要件の「見える化」など、必須の対応が始まっています。
加算金は職員の賃金改善に全額使うのが鉄則です。令和6年度と7年度の2年間で賃金改善を調整できる期間も、残りわずかです。
今すぐ事業所の配分状況を再確認し、年度末(令和8年3月)までに計画的な配分を完了させましょう。適切な運用が、職員の定着と安定した施設運営につながります。
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