障がい者の親亡き後の施設費用｜入所条件や支援制度を解説

障がい者の親亡き後の問題は、多くのご家族が抱える切実な悩みです。

特に、施設への入所条件や費用について不安を感じている方は少なくありません。

この記事では、障がい者グループホームや支援施設の入所条件と費用、親亡き後の収入源や公的手当、生活を支える各種制度について解説します。

この記事を読むことで、親亡き後の備えに必要な知識が身につき、具体的な準備方法がわかるでしょう。

障がい者の施設入所の条件と必要な費用

障がい者が入所できる施設にはいくつかの種類があり、それぞれに条件や費用が異なります。

ここでは、障がい者施設の入所条件や生活にかかる費用を解説します。

グループホームの場合

障がい者グループホームは、障がい者が地域社会の中で自立した生活を送るための支援をする施設です。

原則として、以下のいずれかに該当する18歳以上65歳未満の障がい者が対象です。

• 知的障がい者
• 身体障がい者
• 精神障がい者
• 難病患者

入居するには、原則として身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳のいずれかの手帳が必要です。

ただし、障がい福祉サービス受給者証を保有している場合は、手帳がなくても利用可能です。

障がい支援区分は、1〜6級に認定されている必要があります。

また、障がい者グループホームは障がい福祉サービスのひとつなので、一月に利用したサービス量に関わらず、所得に応じて自己負担額の上限が定められています。

その他に、食費や光熱水費などの自己負担額も、施設ごとに上限が設けられており、原則として月額54,000円以内に収まる仕組みです。

そのため、障がい者グループホームは、経済的負担を抑えつつ生活できる環境が整っている制度であるといえるでしょう。

参考：厚生労働省『障害者の利用者負担』

障がい者支援施設の場合

障がい者支援施設は、18歳以上で障がい支援区分が4以上（50歳以上の場合は区分3以上）の方が対象です。

サービスの利用に対する自己負担額は、グループホームと同様に所得に応じて上限が設定されています。

また、障がい者支援施設を利用する重度の障がいがある方には、国から補足給付が支給される制度もあります。

障がい年金1級を受給している方には28,000円、2級の方には25,000円が手元に残るように調整される仕組みです。

この制度により、障がいによって就労が難しい場合でも安心して施設を利用できるでしょう。

参考：厚生労働省『障害者の利用者負担』

障がい者の親亡き後の収入や公的手当

障がいのあるお子さんを持つ親の最大の心配事は「親亡き後」の生活です。

ここでは、障がい者の親亡き後の収入や公的な手当について解説します。

本人の就労による収入

親が亡くなったあとも、本人が収入を得られるようにするためには、就労支援の活用が欠かせません。

就労には、大きく分けて一般就労と福祉的就労の2種類があります。

• 一般就労：企業に雇用される形での働き方で、障がい者雇用枠の活用により障がいに配慮した職場での勤務が可能
• 福祉的就労：就労継続支援A型・B型事業所での就労

A型は雇用契約があるため毎月の収入が安定しやすく、B型は雇用契約がないものの、作業に応じた工賃が支払われます。

本人の障がいの程度や体調に応じて適切な働き方を選び、経済的な自立を目指しましょう。

家族信託の利用

家族信託とは、親が持つ資産を信頼できる家族に託し、障がいのある子どものために管理・運用してもらう財産管理方法のひとつです。

家族信託のメリットは、親の意思を反映した資産管理ができる点です。

この方法により、親が高齢になって判断能力が低下しても、事前に定めた信託契約に従って財産が運用されます。

弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら家族全体で話し合い、最適な信託の形を考えましょう。

障がい年金や特別障がい者手当の受給

障がいの程度に応じて、障がい年金や特別障がい者手当を受給できます。

障がい年金には、障がい基礎年金（1級・2級）と障がい厚生年金（1級・2級・3級）があり、国民年金または厚生年金に加入している方が対象です。

しかし、20歳前に障がいを負った方や、60歳以上65歳未満で障がいが生じた方は、保険料の納付要件を問わず障がい基礎年金を受給できる場合があります。

また、特別障がい者手当は、日常生活において常に特別な介護を必要とする20歳以上の在宅の重度障がい者を対象に支給される手当です。

これらの制度を利用するには、医師の診断書や初診日の証明など、所定の書類が必要となります。

受給を希望する場合は、事前に要件を確認したうえで、早めに申請手続きを進めましょう。

参考：国民年金機構『障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額』

生活保護の受給

収入や資産が少なく、他の支援制度では生活が難しい場合には、生活保護の利用も選択肢の一つです。

グループホームや障がい者支援施設に入所する場合、入所費用や食費・光熱水費などが生活保護で賄われるため、自己負担が軽減されます。

参考：厚生労働省『生活保護制度』

障がい者の生活を支える制度

障がいのある方が親亡き後も安心して生活を送るためには、さまざまな公的支援制度の活用が欠かせません。

ここでは、障がい者の日常生活や社会参加を支えるための制度を解説します。

障がい福祉サービス

障がい福祉サービスは、障がいのある方の日常生活や社会参加を総合的に支援するための制度です。

ホームヘルプや就労支援・施設入所支援など、一人ひとりの障がいの程度や状況に応じた適切なサービスが提供されます。

障がい福祉サービスを利用するには、まず市区町村の窓口で「障がい支援区分」の認定を受け、サービス等利用計画を作成する必要があります。

親亡き後に備えて、早めに地域の相談支援専門員に相談し、どのようなサービスが適しているか検討しましょう。

参考：厚生労働省『障害福祉サービスについて』

成年後見制度

成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方の権利を守り、生活を支援する法的な仕組みです。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な状態にある方を対象とし、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が本人を支援します。

一方、任意後見制度は、将来の判断能力低下に備えてあらかじめ自らの意思で支援者を選び、契約を結んでおく制度です。

成年後見制度は一度開始すると継続的な関与が必要となるため、内容を十分に理解したうえで検討しましょう。

参考：厚生労働省『成年後見制度とは』

地域生活支援事業

地域生活支援事業は、障がいのある方が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、市区町村や都道府県が実施する事業です。

移動支援や意思疎通支援・日常生活用具の給付など、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟にサービスが実施されます。

この事業は各自治体で運用されており、サービスの内容や利用方法が異なるため、自治体の福祉窓口に確認しておくと安心です。

参考：厚生労働省『地域生活支援事業』

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は、地域の社会福祉協議会が窓口となり、日々の金銭管理やサービス利用をサポートする事業です。

この事業は、以下のいずれにも該当する方が対象です。

• 認知症高齢者や知的障がい者・精神障がい者などで判断能力が十分でない方
• 契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方

障がいのある方の判断能力の程度に応じて、日常生活自立支援事業と成年後見制度を適切に選択すると良いでしょう。

参考：厚生労働省『日常生活自立支援事業』

障がい者の親亡き後に相談できる機関

親が亡くなった後も、子どもが安心して暮らせる環境を整えるには、適切な相談窓口を知っておく必要があります。

ここでは、親亡き後に頼れる主な相談機関について解説します。

市区町村の障がい福祉窓口

市区町村の障がい福祉窓口では、生活支援や施設入所の手続き、金銭的な援助など、さまざまな相談を受け付けています。

障がい者の将来の住まいについて悩んでいる場合、グループホームや入所施設の空き状況や申込み方法・費用面での支援制度などの具体的な情報を得られます。

市区町村によって提供されるサービスや支援内容には差があるため、お住まいの地域の障がい福祉窓口に直接確認しましょう。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、地域福祉の向上を目的とした民間の支援組織で、各市区町村に設置されています。

先ほど紹介した「日常生活自立支援事業」もそのひとつで、障がいのある方が地域で安心して暮らし続けられるよう、さまざまな支援を提供しています。

親が元気なうちからこのようなサービスを活用しておくと、親亡き後も安定した生活環境を維持しやすくなります。

将来への備えとして、まずはお住まいの地域の社会福祉協議会に相談し、利用できる支援内容について早めに情報収集しておくと良いでしょう。

参考：社会福祉法人全国社会福祉協議会『市区町村社会福祉協議会のホームページ(検索方法)』

地域生活支援センター

地域生活支援センターは、障がいのある人が地域で安定した暮らしを続けられるよう、日常生活全般の相談に応じる総合的な窓口です。

福祉サービスの利用に限らず、精神的なサポートや家族への助言など、生活に密着した支援を提供しています。

障がい者本人の意思を尊重しながら、今後の生活の相談に応じてくれるため、親亡き後も非常に心強い味方となるでしょう。

法律相談窓口

親亡き後の障がい者の生活を法的に守るためには、専門的な法律相談窓口の活用が欠かせません。

各地域の「法テラス」は、法律に関する情報提供や相談サービスを実施している機関です。

相談内容に応じて、適切な相談窓口や法制度情報を無料で提供しています。

特に財産管理や権利擁護に関する問題は、早めに法律の専門家に相談すると安心です。

専門家の助言を得ながら、親が元気なうちにお子さんの将来を法的に守る仕組みについて検討しておきましょう。

参考：日本司法支援センター『法テラス』

よくある質問

障がいのあるご家族を持つ方にとって、将来への不安は尽きないものです。

ここでは、親亡き後の生活や支援体制についてよく寄せられる質問と、その対策について解説します。

親亡き後問題の対策は？

親亡き後の生活で第一に考えるべきことは「住まい」と「生活費」の確保です。

グループホームや施設を利用すれば、日常的な支援を受けながら自分らしい暮らしを続けられます。

さらに、生活費の管理方法としては、成年後見制度や家族信託などを活用し、財産の安全な管理をあらかじめ整えておきましょう。

こうした「親亡き後」の課題に備えるうえで最も大切なのは、できるだけ早い段階から準備に取りかかることです。

将来の不安を抱え込まないためにも、支援の選択肢や費用の目安を整理し、計画的に備えておくと良いでしょう。

障がい年金と生活保護は両方もらえますか？

障がい年金と生活保護は、条件を満たせば同時に受給が可能です。

ただし、両方を満額で受け取ることはできず、生活保護の支給額は障がい年金の額によって調整されます。

一人ひとりの状況に応じて適切な制度の利用ができるよう、専門家に相談しながら

具体的な試算をしていきましょう。

【まとめ】障がい者の親亡き後の施設費用はどうなる？

親亡き後の生活を支えるには、住まいやお金、日常生活の支援をどのように受けるかを早めに考えることが大切です。

施設の利用には条件がありますが、ほとんどの場合は所得に応じた費用負担の仕組みが整っています。

また、障がい年金や生活保護、各種の手当・制度を上手に利用すれば、経済的にも安心した生活を続けていける可能性があります。

お子さんの将来に不安がある方は、市区町村の窓口や支援機関に相談しながら適切な準備を進めていきましょう。