利用者の安全確保と人権尊重のバランスを取ることは、支援の質を左右する重要な課題です。身体抑制(身体拘束)の三原則を理解し、適切に実践することは、グループホームの運営において不可欠な知識といえるでしょう。
この記事では、身体抑制を行う際の判断基準となる「身体抑制の三原則」について、具体例を交えながら解説します。また、身体抑制が問題とされる理由や、正しい実施方法についても詳しく解説します。
この記事を通じて、障がい者グループホームの運営に必要な身体抑制に関する知識を深め、より質の高い支援を提供するための指針を得ることができるでしょう。利用者の尊厳を守りながら、安全で適切なケアを実現するための重要な情報源となります。
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身体抑制(身体拘束)とは?
身体抑制、または身体拘束は、特に介護や医療の現場で重要な概念です。ここでは、身体抑制と身体拘束について以下のポイントを解説します。
- 身体拘束と身体抑制の違い
- 身体抑制(身体拘束)の定義
それぞれ解説します。
身体拘束と身体抑制の違い
身体拘束と身体抑制は、本質的にはほぼ同じ意味を持つ言葉です。どちらも、患者や利用者の身体の自由を制限する行為を指します。しかし、使用される場面に違いがあります。
医療現場では「身体抑制」という言葉がよく使われます。例えば、手術後の患者が無意識に点滴を抜いてしまうのを防ぐため、一時的に手の動きを制限することがあります。
一方、障がい者や介護施設では「身体拘束」という言葉が一般的です。例えば、転倒のリスクがある認知症の方や障がいのある方を、車椅子やベッドに縛り付けるような行為を指します。
このように、場面によって使い分けられていますが、どちらも人権や尊厳に関わる重要な問題です。私たちは、これらの行為が本当に必要なのか、常に考え直す姿勢を持ちましょう。
身体抑制(身体拘束)の定義
厚生労働省の定義によると、身体抑制(身体拘束)とは「本人の行動の自由を制限すること」を指します。これには、施設や病院での行為だけでなく、家族が行う制限も含まれます。
重要なのは、これらの行為が本人の尊厳を損ない、QOL(生活の質)を低下させる可能性があるということです。身体抑制は、本人の自由を奪うだけでなく、筋力の低下や認知機能の悪化にもつながる恐れがあります。
私たちは、安全確保と自由の保障のバランスを常に考えながら、できる限り身体抑制を行わないケアを目指す必要があります。そのためには、チームで知恵を出し合い、創意工夫を重ねていきましょう。
参考:厚生労働省『介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き』
身体抑制(身体拘束)が認められる三原則
身体抑制は、原則として避けるべき行為ですが、特定の状況下では認められる場合があります。ここでは、身体抑制が許容される三つの原則について解説します。
- 切迫性
- 非代替性
- 一時性
これらの原則を順に見ていきましょう。
切迫性
切迫性の原則は、利用者本人または他の利用者の生命や身体が危険にさらされる可能性が極めて高い場合にのみ適用されます。この判断は慎重に行う必要があり、単なる不便さや軽度のリスクでは不十分です。
例えば、利用者が突然激しい自傷行為を始めた場合や、他の利用者に対して暴力的な行動を取り始めた場合などが該当します。しかし、単に多動や徘徊があるというだけでは、切迫性の基準を満たしません。
切迫性の判断は、常に利用者の最善の利益を考えて行うべきです。一人で判断せず、複数のスタッフで状況を確認し、話し合いを重ねましょう。
非代替性
非代替性の原則は、身体抑制以外に有効な代替手段がない場合にのみ適用されます。非代替性を判断する際は、まず身体抑制を行わずに対応できる方法をすべて検討することが不可欠です。
例えば、不穏な利用者に対しては、環境調整や気分転換、コミュニケーションの工夫など、さまざまな非拘束的アプローチを試みる必要があります。
具体的には、ベッドからの転落リスクの高い利用者に対しては、ベッドを低くしたり、床にマットを敷いたりするなどの環境整備が考えられます。センサーの活用も効果的です。また、不眠による夜間の徘徊には、日中の生活を見直し、睡眠リズムを整える取り組みが効果的かもしれません。
非代替性の判断は、チーム全体で行うことが大切です。多角的な視点で代替案を出し合い、最善の対応を見つけていきましょう。
一時性
一時性の原則では、身体抑制が一時的な措置であることが求められます。一時性とは、身体抑制を可能な限り短時間で解除することを意味します。
継続的または長期的な抑制は、利用者の身体的・精神的健康に深刻な悪影響を及ぼす可能性があるため、避けなければなりません。
例えば、興奮状態による自傷行為がある利用者に対して身体抑制を行う場合、その状態が落ち着いたら直ちに解除するべきです。また、医療処置のために一時的に抑制が必要な場合も、処置が終わり次第速やかに解除することが求められます。
定期的な見直しも重要です。常に利用者の状態を観察・記録し、抑制の必要性を再評価するなどの取り組みが求められます。
一時性の原則を守ることで、利用者の自由と尊厳を最大限に尊重しつつ、必要最小限の身体抑制を実現できます。常に「できるだけ早く解除する」という意識を持ち、ケアに当たりましょう。
身体抑制(身体拘束)になる具体例
障がい者グループホームにおいて、身体抑制は極力避けるべき行為です。しかし、どのような行為が身体抑制に該当するのか、具体的に理解しておくことが重要です。ここでは、身体抑制となる具体例について以下のポイントを解説します。
- 自分で開けられない部屋に閉じ込める
- ベッドや車椅子へ固定する
- ミトン(手袋)を着用する
- 向精神薬を過剰に服用させる
それぞれの例について詳しく見ていきましょう。
自分で開けられない部屋に閉じ込める
利用者を自分で開けられない部屋に閉じ込めることは、身体抑制に該当します。これは、利用者の自由を奪い、心理的なストレスを与える可能性があるためです。
例えば、利用者が外出しようとするたびに部屋に外から鍵をかけて閉じ込めるような行為が該当します。また、指示に従わない利用者を「反省部屋」のような場所に隔離することも、身体抑制に当たります。
こうした行為の代わりに、利用者が安全に過ごせる環境づくりや、外出したい気持ちに寄り添う支援を心がけましょう。例えば、施設内に自由に歩ける安全な空間を設けたり、定期的な外出プログラムを企画したりすることで、閉じ込めなくても安全を確保できる可能性があります。
利用者の行動の自由を尊重しつつ、安全を確保する方法を模索しましょう。
ベッドや車椅子へ固定する
利用者をベッドや車椅子に固定することは、転倒や転落を防ぐ目的で行われることがありますが、これも身体抑制に該当します。この行為は利用者の動く自由を奪い、身体機能の低下を招く恐れがあります。
具体的には、体幹ベルトなどを使用してベッドから起き上がれないようにしたり、車椅子に座ったままテーブルに固定したりする行為が該当します。
ただし、利用者の身体状況に合わせて、変形や拘縮を防止し、体幹を安定させる目的で使用されるベルトやテーブルは、一概に身体抑制とは言えません。
安全確保のためには、まず環境整備を考えましょう。例えば、ベッドの高さを低くしたり、転倒防止マットを敷いたりすることで、固定せずとも安全を確保できる可能性があります。また、定期的な声かけや見守りを強化することで、危険を未然に防ぐこともできるでしょう。
利用者の自由と安全のバランスを取りながら、最適な支援方法を探っていきましょう。
ミトン(手袋)を着用する
ミトン型の手袋を着用させることは、自傷行為や点滴・チューブ類の自己抜去を防ぐ目的で行われることがありますが、これも身体抑制に該当します。この行為は利用者の手指の機能を制限し、日常生活動作(ADL)の低下を招く可能性があります。
例えば、自傷行為がある利用者に対して常にミトンを着用させたままにしたり、夜間だけ着用させたりする行為が該当します。こうした対応は、一時的には効果があるように見えても、長期的には利用者の QOL(生活の質)を低下させてしまいます。
代替策として、まず自傷行為の原因を探ることが重要です。不安や痛み、不快感などの原因を探りましょう。そのうえで、環境調整やコミュニケーションの工夫などで、根本的な問題解決を図る必要があります。
利用者の気持ちに寄り添いながら、安全で快適な生活を支援する方法を考えていきましょう。
向精神薬を過剰に服用させる
利用者の行動を制限する目的で向精神薬を過剰に服用させることは、身体抑制の一つです。
例えば、夜間の不穏を抑えるために睡眠薬を過剰に投与したり、興奮状態を抑えるために常時向精神薬を使用したりする行為が該当します。こうした対応は、一時的に「落ち着いた状態」を作り出せても、利用者の本質的な問題解決にはつながりません。
代わりに、利用者の行動の背景にある原因を探ることが重要です。例えば、環境の変化や身体的不調などが行動の引き金になっている可能性があります。これらの要因に適切に対応することで、薬に頼らない支援が可能になるかもしれません。
医療関係者と密に連携し、必要最小限の薬物使用にとどめながら、利用者の生活の質を高める支援を目指しましょう。
身体抑制(身体拘束)が問題とされる理由
身体抑制や身体拘束は、障がい者支援の現場で慎重に扱われるべき問題です。ここでは、身体抑制が問題とされる理由を解説します。
- 刑法上の犯罪になり得る
- 障害者虐待防止法で原則禁止されている
- 利用者と職員に精神的な負担を強いる
それぞれ解説します。
刑法上の犯罪になり得る
身体抑制は、一見すると利用者の安全を守るための行為に思えるかもしれません。しかし、実際には刑法上の重大な犯罪に該当する可能性があるのです。
例えば、利用者の手足を縛る行為は「逮捕罪」に、部屋に閉じ込める行為は「監禁罪」に該当する可能性があります。刑法第220条では、不法に人を逮捕または監禁した者に対して、3カ月以上7年以下の懲役刑が定められています。
つまり、たとえ安全確保のために行った行為であっても、法的には犯罪行為とみなされる可能性があるのです。障がい者の権利を守り、適切なケアを提供するためにも、身体抑制に頼らない支援方法を模索しましょう。
参考:e-Gov『刑法』
障害者虐待防止法で原則禁止されている
障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)では、身体抑制は明確に禁止されています。この法律は、障がい者の権利を守り、尊厳ある生活を保障するため、2011年に制定されました。
同法では「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」を身体的虐待として定義しています。これは、養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者のいずれが行った場合でも虐待に該当します。
法律で禁止されている行為を避け、利用者の権利を尊重した支援を心がけましょう。緊急やむを得ない場合を除いて、身体抑制を行わない支援方法を常に模索し続けることが重要です。
参考:e-Gov『障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律』
利用者と職員に精神的な負担を強いる
身体抑制は、利用者だけでなく、職員にも大きな精神的負担をもたらします。この負担は、ケアの質の低下や職場環境の悪化につながる可能性があります。
利用者にとって、身体を拘束されることは大きな屈辱感や不安、怒りを引き起こします。例えば、ベッドに縛り付けられることで、自由を奪われた感覚や無力感を味わうかもしれません。これは利用者の尊厳を著しく傷つけ、精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、職員も身体抑制を行うことで罪悪感や自信の喪失を経験する可能性があります。「本当にこれで良いのか」という疑問や葛藤が生じ、仕事へのモチベーション低下につながることもあるでしょう。
このような状況を避けるためにも、安易に身体抑制に頼らない支援方法を模索し、利用者と職員の双方が安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。
身体抑制(身体拘束)の正しい実施方法
障がい者グループホームにおいて、身体抑制は極力避けるべき行為です。しかし、緊急やむを得ない場合に限り、適切な手順で実施することが求められます。ここでは、身体抑制を行う際の正しい実施方法について以下のポイントを解説します。
- 本人と家族への説明
- 継続的な観察・記録
- 再評価〜拘束解除
それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
本人と家族への説明
身体抑制を実施する前に、利用者本人とその家族に対して丁寧な説明を行うことが極めて重要です。
説明の前には、身体抑制の必要性について、施設全体で慎重に判断することが大切です。「身体拘束防止委員会」のような組織を設置し、事前にルールや手続きを定めておきましょう。これにより、個人の判断ではなく、組織としての適切な決定が可能になります。
実際に身体抑制を行う際には、その内容、目的、時間帯、期間などを詳細に説明しましょう。例えば「夜間のみベッドに柵を設置する」「自傷行為防止のため、一時的にミトンを着用する」といった具体的な内容を、わかりやすく伝えることが大切です。
また、契約時に一般的な説明をしていたとしても、実施の都度、個別に説明を行うようにしましょう。
継続的な観察・記録
身体抑制を実施した後は、継続的な観察と記録が不可欠です。
観察では、利用者の身体状態や精神状態を定期的にチェックします。例えば、拘束部位に発赤や褥瘡がないか、不安や苦痛の兆候はないかなどを注意深く観察します。また、必要に応じてバイタルサインの確認も行いましょう。
記録は具体的かつ詳細に行うことが大切です。拘束の開始時間、終了時間、観察結果、利用者の反応などを漏れなく記録します。
これらの観察と記録は、ケアの質を向上させるだけでなく、万が一の事態に備える意味でも重要です。定期的なカンファレンスで情報を共有し、より良いケア方法を模索する材料としても活用しましょう。
再評価〜拘束解除
身体抑制は、常に「緊急やむを得ない場合」に限定されるべきです。そのため、定期的な再評価と、できるだけ早期の拘束解除を目指すことが重要です。
再評価では、身体抑制の必要性が継続しているかを慎重に検討します。また、より軽度の方法で対応可能かどうかも検討しましょう。
拘束解除の判断は、多職種で構成されるチームで行うことが望ましいです。医師、看護師、介護職員など、さまざまな視点から利用者の状態を評価し、総合的に判断しましょう。
身体抑制の解除後も、しばらくは注意深く観察を続けることが大切です。再び危険な状況が生じないよう、環境調整や支援方法の見直しを行いましょう。
まとめ:身体抑制(身体拘束)の三原則
身体抑制の三原則を理解することは、障がい者グループホームの運営において極めて重要です。切迫性、非代替性、一時性という三つの条件を満たす場合にのみ、身体抑制が許容されることを理解しましょう。
しかし、これらの原則を満たす場合でも、身体抑制は最後の手段として考えるべきです。利用者の尊厳を守り、自立を支援するためには、創意工夫を重ねた代替策の検討が不可欠です。
環境整備、コミュニケーションの改善、多職種連携など、様々なアプローチを試みることで、身体抑制に頼らない支援を実現できる可能性があります。常に利用者の最善の利益を考え、より良い支援方法を模索し続けましょう。
「新たな事業展開で収益を拡大したい」
株式会社S-STEPが、豊富な経験と独自のノウハウで、そんなあなたの思いを実現します!
✅ 開所準備から運営まで徹底サポート!
✅ 無駄なコストを削減し、スムーズな開所を実現!
✅ いつでも解約OK!安心のサポート体制!
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